エイズだったら…危険行為を自覚されている方なら、心配で夜も眠れないかもしれません。

救いなのは少し前まで「エイズ=死」でしたが、良い薬が開発されたことで普通の生活を送ることが可能になっているということです。

ただし一度発症してしまうと、治療効果が悪くなって障害が残ることもあるため、一刻も早く治療を開始する必要があります。

 

HIVとエイズ

 

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とエイズは違い、HIVはHuman Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)の頭文字で、AIDSというのはAcquired Immunodeficiency Syndromeの頭文字を取ったもの。

エイズはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染して免疫が低下することで引き起こされる、症状の集まりのことを指します。

感染者数

厚生労働省エイズ同行委員会の報告によると、日本国内で2015年度に新たにHIV感染者と報告されたのは1,006件で、最近はあまり変化がありません。

国内のHIV感染経路は性的接触による感染が88.2%で、そのうち同性間の性的接触が77.9%、性別では男性のHIV感染者数がかなりを占めています

世界的にも同じ傾向で、男性間の性的交渉で直腸を使うことが原因になっています。

 

HIVウイルスのメカニズム

HIVは、ヒトの体を守るCD4陽性細胞といわれるリンパ球(ヘルパーT細胞)に感染し、体の免疫機能や感染防御機能を低下させて様々な感染症を引き起こします。

CD4陽性細胞というのは、たんぱく質CD4陽性細胞を細胞の表面にもつリンパ球のことで、免疫機能の中心的な役割を果たしている細胞のこと。

HIVウイルスは、リンパ節を通してCD4陽性細胞に入り込んで自らの遺伝子情報をリンパ球に組み込み、リンパ組織の中で感染と複製を始めます。

 

つまり体を守るはずのCD4陽性細胞が、ウイルスを生産し続ける場所へと変わってしまうということ。

その後、CD4陽性細胞の数はHIVウイルスによって徐々に減っていき、健康な時にかかることのなかった日和見感染などを発症してついにエイズになってしまいます。

 

感染経路と感染率

意外にもHIVウイルスは熱や塩素に弱く、感染力がありません。

普通の生活を送っていて感染することはほとんどないため、くしゃみや唾液、同じ食器で食べてもうつることはないのです。

感染経路は血液、精液、膣分泌物、母乳で、性行為がほとんど占めています。

日常生活では、性行為と血液に気を付けていれば、ほとんど心配のないウイルスなんですね。

感染リスク

エイズが感染するリスクは感染する側の皮膚の構造に関係していて、高いものから順番に以下のようになっています。

 

  1. アナルセックスの肛門側
  2. アナルセックスの陰茎側
  3. 膣を使ったセックスの女性側
  4. 膣を使ったセックスの男性側
  5. オーラルセックスの口側
  6. オーラルセックスの性器側

 

アナルセックスの肛門側の感染率が高いのは、膣粘膜に比べて直腸の粘膜が薄いことが原因。

直腸の粘膜は摩擦で簡単に傷がつくうえに洗い流せないため、リスクが高くなるのです。

また腸の粘液にも、HIVウイルスが含まれているといわれています。

 

このことから男性同士で性行為を行う人、Men who have Sex with Men(MSM)は、重要な意味があるわけです。

オーラルセックスの感染率は低いですが、口内炎や傷がある時は正常な粘膜ではないため、感染する可能性があります。

口の中で出血しているとさらにリスクが高まるため、オーラルセックスは感染率が低いとはいえ、気を使う必要はありそうです。

 

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HIVに感染すると・・・

細菌とウイルス

 

HIVの感染は、急性期、無症候期、エイズ期の3つに分けられます。

① 感染の初期症状(急性期)

感染すると2~6週間の潜伏期間があり、その後半数以上の人が、風邪やインフルエンザに似たような症状が出ます。

しかし全く症状が出ないなど人によって違うため、初期症状というのは簡単に判断できるものではありません。

風邪のような症状があっても数週間で消えるため、気付かないまま過ごしていることが少なくありません。

このようなことが「いきなりエイズ」の増加につながっています。

初期の急性期はウイルス量がかなり多く、他の人に感染させてしまうリスクが非常に高いので、この時期に突き止めることは新しい感染を防ぐ上で大変重要になってきます。

急性期によく見られる症状

EBウイルスやサイトメガロウイルスなどが原因の、伝染性単核球症といわれる風邪のような症状が出ます。

特に長引く高熱やひどく痛む咽頭痛、首の後ろ辺りのリンパ節が腫れる場合は要注意。

 

  • 発熱や微熱
  • 倦怠感
  • 筋肉痛
  • リンパ節腫脹
  • 咽頭炎
  • 発疹
  • 関節痛

 

急性期にあらわれる皮膚の発疹や症状

発疹は、熱が出てから1週間後に現れることが多く、発熱と同時に出ることは少ないようです。

急性期の半数くらいに発疹がありますが、人によって症状はさまざまでパターンが一致しません。

ある人は発疹が全身に現れ、1週間程度で何事もなかったかのように消えていきます。

他の人では盛り上がったような強いかゆみが現れ、良くなったり悪くなったりしながら慢性化することもあります。

 

その他の皮膚症状

帯状疱疹 エイズ 初期症状 発疹

 

急性期だけではなく、無症候期でも皮膚の症状がみられることがあります。

湿疹や皮膚炎

健康な人でも湿疹や皮膚炎になる人は多いですが、HIV感染者の場合は、治ったり悪くなったりを繰り返します。

慢性化すると皮膚のバリア機能が壊れ、アトピー性皮膚炎になってしまうことも。

 

帯状疱疹

帯状疱疹は免疫力が下がると発症し、60代以降に多い病気ですが通常は一生に一度しかかかりません。

しかし若いのに症状がひどかったり、何度も繰り返したりする場合は要注意です。

このような繰り返す帯状疱疹は、HIVを疑う重要な症状の1つとなっています。

 

帯状疱疹の初期症状にかゆみはある?

 

単純ヘルペス

単純ヘルペスウイルスが原因の口唇ヘルペスや性器ヘルペスは、健康であってもよくかかる病気の1つです。

しかしヘルペスが大きかったり、1ヵ月以上治らなかったりする場合はHIVの可能性があるとして、見極めるための重要な疾患の一つとなっています。

 

口腔カンジダ症

口腔カンジダ症は、免疫が低下しているHIV感染の初期からよく見られる症状です。

舌や喉の粘膜に白苔ができ、剥がすとただれているのが特徴。

カンジダ菌は健康な人にも存在する真菌で、高齢者や幼児に多く見られますが、HIV感染の場合は若い人にも起こります。

実は口腔カンジダ症は、厚生労働省の定めるAIDS発症となる指標の中には含まれていません。

AIDS指標のカンジダ症というのは食道、気管、気管支や肺カンジダ症のことになります。

 

伝染性軟属腫(水イボ)

数ミリくらいの赤みのある豆粒のような発疹で、周りがかゆくなることもあります。

伝染性軟属腫ウイルスによるもので、通常は子どもが夏場にプールで感染することが多い病気です。

大人の場合は性行為感染症として多発することがあり、アトピー性皮膚炎や膠原病などの免疫抑制剤の服用などでも発症するケースがあります。

 

尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルス6型と11型によって引き起こされる性感染症です。

肛門周辺にできることが多く、花キャベツや鶏のとさかのような形になって悪臭を放ちます。

HIV感染者の場合は尖圭コンジローマがかなりの大きさになることもあるようです。

 

カポジ肉腫

70~80年代にHIVウイルス発見のきっかけとなったのが、カポジ肉腫とニューモシスチス肺炎です。

高齢者や免疫抑制剤を服用している人以外は、普通は発症しません。

これらの日和見感染症にかかっていることも、HIV感染症を疑う指標になります。

 

足や爪の水虫(白癬)

健康な人の中にも日常的に見られるものですが、HIV感染者はひどくなるケースが多いようです。

 

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② 無症候期

急性期の前にある潜伏期間が1度目とすると、2度目の潜伏期間になるのが無症候期です。

症状のない無症候期は通常3~10年続き、期間には個人差があります。

急性期を過ぎると症状がなくなってウイルス量はある程度のところに落ち着くため、普段通りの生活が送れてしまうことが特徴。

 

しかしこの時期でも、原因不明の倦怠感や微熱が出ることがあります。

症状がないため、この時期にHIVと診断される人は、思い当たることがある人で自ら検査をする人が多い特徴があるようです。

この時期にかかりやすい病気としては、帯状疱疹や脂漏性皮膚炎、尋常性疣贅、口腔カンジダ症などがあります。

これらの症状を繰り返すのは免疫力が落ちているということでもあり、HIV感染を疑う要因になります。

 

③ エイズ期

厚生労働省が定めた、カンジダ症やクリプトコッカス症、ニューモシティス肺炎など、23種類のAIDS指標疾患を発症した場合にエイズと診断されます。

時間の経過とCD4の減少とともに、これらの日和見感染症に感染しやすくなります。

 

  • 結核(全身性)
  • ニューモシスチス肺炎、クリプトコッカス症、トキソプラズマ脳症
  • サイトメガロウイルス感染症(髄膜炎、肺炎)
  • 非定型抗酸菌症(全身性)、悪性リンパ腫、HIV脳症

 

CD4の数が200/μLを下回るとエイズを発症しやすくなるといわれていますが、全員がそうなるわけではありません。

 

いきなりエイズって!?

実は近年、急性期や無症候期に気付かないまま、エイズを発症してしまう「いきなりエイズ」になるケースが増えています。

エイズを発症してからHIV感染に気が付く、「いきなりエイズ」といわれる人が3割以上を占めている病院もあります。

特に40代や50代以上に増えていて、世代的に過去のエイズに対する偏見が根底にあるのではないかといわれています。

 

他の性感染症との関係

HIVに感染している人は、他の性感染症にもかかっていることが多いというデータがあります。

以下の感染症には注意して下さい。

 

  • 梅毒
  • 淋病
  • アメーバ赤痢
  • ヘルペス
  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • C型肝炎
  • 尖圭コンジローマ
  • ケジラミ症
  • 疥癬
  • クラミジア

 

梅毒にかゆみはない!感染経路と潜伏期間はどれくらい?

 

一刻も早く検査を!

エイズは検査をしない限り、風邪なのかエイズなのか、判断することはできません。

一度エイズを発症してしまうと、発症前から薬を服用し始めた場合に比べて明らかに治療効果が悪くなるため、感染の発見は早いほど良いのです。

また日和見感染で中枢神経を侵されてしてしまうと、認知機能や運動障害が出ることもあり、通常の生活を送れなくなってしまうこともあります。

HIV感染症を初期の段階で発見し、早めに治療を開始することは、周りの人や自分にとっても大変重要なことなのです。

検査する時期

検査をしても陽性とならず、感染していることを見逃してしまう時期があります。

ウインドウピリオドといい、この時期には検査をしても正確な結果が出ません。

HIV抗体は4週間後にできるので、検査は4週間たってから受けるようにしましょう。

 

 

さいごに

エイズの検査をするのは勇気がいりますが、危険行為の自覚がある方は必ず検査をすることが必要です。

現在では、早めに治療を開始すれば助かる可能性が大きく広がっています。

大切な人にうつしてしまった・・・早く検査していれば・・・と後悔しないためにも、責任を持って向かい合っていきたいですね。

 

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【参考URL】
厚生労働省 「後天性免疫不全症候群 指標疾患

国立感染症研究所「AIDSとは」
独立行政法人 国立国際医療研究センター「エイズ治療・研究開発センター
【参考文献】
HIV診療の「リアル」を伝授します(丸善出版)